インド旅行にまつわるエトセトラ

2024年1月はじめてのインド旅行前後のおはなし。

機内にて

羽田からタイのバンコクまで、約7時間。
バンコクからインドのデリーまで、約4時間半。
デリーから国内線でプネーまで、約2時間。

飛行機に乗るたび、機内食を食べ、寝たり起きたり、いまが何時で何の食事かまったくわからなくなる。
時間だから食べる・寝る、という概念はなくなり、身体の感覚だけで、食べるか寝るのかを決める。
これが本来なんだよなあと、立ち戻る。
時間、時計の数字は便宜上のルールで、こうして簡単に変わるし歪む。
わたしの身体の感覚、これが本当の拠り所なのだ。

夜中に羽田を出発した飛行機内では、よく寝た。どこでも寝られる体質でありがたい。
ただ時々目が覚めると、お尻は痛いし、とても寒い。
隣の席が空いていたので、斜めに広くスペースを使って、ブランケットも二つ使わせてもらって助かった。
エコノミーではなく、ビジネスクラスだったらやっぱりもっと快適なのかな、いつか乗れるようになりたいなあ。
そう、ふんわり望んだ。

ここがポイント。
これがインドからの帰りの便では、まったく感覚が変わってくるので、そのときに思い出して欲しい。
わたしはこの時、ふんわり望んだのだ。

トランジットのバンコクでは、朝焼けがとても綺麗だった。
空港のひらけた地平線の向こう、登ってくる赤く丸い太陽に水平に縞模様が入った面白い形が見えた。大きな虹も出ていた。
美しい景色に、タイにも歓迎されていると感じた。
今回は素通りだったけど、いずれタイも訪れてみたい。


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デリーでは国内線の乗り継ぎが間に合わないかもしれない、と大慌てしたわけだけど、無事乗ることが出来た。

このプネーに向かうインド国内線では、機内食に関してちょっと面白いことがあった。

まず、辛い!
機内食に限らずのちのちホテルでも味わうことになるが、インドのカレーはかなり辛い。カレー以外も割と辛い。
ヨーグルトが付いていたので中和して食べることが出来たが、わたしのような日本の中辛が限度という人には、つらいだろう。
アテンドしてくれたインド人曰く、辛くないと美味しくない、食べない、とのこと。
機内食で出るのだから、この辛さが標準なのだ。

それから、座席のお隣さんたち。
三列席で、通路側がわたし、真ん中が白人の若い男性、窓側がインド系と思われる若い男性。
もちろん全員知り合いでもない。

機内食のカレーには、チャパティがついてきた。
手でちぎるので、ショルダーバッグに忍ばせていたペン型アルコールスプレーで手指消毒していたら、隣の白人男性が自分にもやってくれ、と手を差し出してきた。
もちろんどうぞ、とシュッシュしながら、何だかこういう小さなコミュニケーションが嬉しい。

普段もまわりに外国人がまったく居ないわけではないけど、日本語ペラペラ、日本文化に精通した人たちばかり。
異文化のなかで、さまざまな人種の人がいて、適当な英語と身振りで意思疎通するのは、わたしの日常外だ。
空港で荷物を離さないよう親切に声をかけてくれる人、どこから来たのかと話しかけてくれる人、それにカレーが辛すぎる時には水がもう一本欲しいと伝えないといけない。
そんな小さなコミュニケーションが、海外にいることをだんだん普通のことに感じさせてくれる。

そして、白人男性を挟んで窓側に座っていたインド系の男性。彼の行動はちょっと面白かった。
もともと、あれが欲しい、これは要らない、はっきり意思表示するなあとは思っていた。

食べ終わる頃、CAさんがワゴンで飲み物を配りに来てくれた。
機内食のワゴンはこちら側、あちら側、ここまでと範囲が決まっているし、まずは食事の配布だけ、水だけ、飲み物だけ、食器の回収だけなど、段取りと役割が分けられている。

まず彼は、わたしたちの座席より先のエリアに行こうとしていた飲み物ワゴンを呼び止めた。
そして食べ終わった食器を下げて欲しいと頼んだ。
ワゴンのCAさんは、すぐに戻るから、または別のワゴンが来るから、ちょっと待ってほしい、というようなことを言った。
しかし、すぐ下げて欲しい、の主張。このやりとりが二、三回繰り返されて、彼の食器は下げられた。

さらにそこで終わらず、隣の白人男性の食器も下げるようにCAさんにお願いした。
お隣の彼に食べ終わっているかも確認せず。
わたしもお隣の白人の彼も、え?なんで?と、二人して困惑して固まったのがわかった。
CAさんも当然先に進みたいので、それはまた回収しにくるから、と断った。
しかし窓側の彼は折れなかった。
彼曰く、視界に入ると自分の気分が悪いから、片付けて欲しい、とのこと。
(ほとんど聞き取れない英語でも、意外と単語と状況で言ってることわかるものだなあと思った)

なるほど!
わたしはとてもハッとした。
食べ終わってぐちゃぐちゃになった食器が視界に入るより、綺麗な方が断然良い。
なぜそんなに回収を急がせるんだろう?と不思議だったけど、それが理由だった。
しかも自分のテーブルだけでなく、見ず知らずのお隣のテーブルまで望むなんて!
それもOKなんだ、望んで良いのだと、わたしのなかで一つ制限が外れた。
(わたしはカレーが辛すぎてまだ食べている途中だったし、離れているから何も言われなかった)

あくまでお願いをしているだけだし、ちゃんと理由を伝えたら、お隣の白人男性もCAさんも納得した様子だった。

こうして窓側の彼は綺麗に片付いたテーブルにゆうゆうとスマホを立てかけて動画を視聴していた。
ちなみにそのまま飲み物ももらえたから、お隣の白人の彼も綺麗なテーブルでゆったりコーヒーを飲んでいた。

そんなちょっとした気づきのシーンだった。