インド旅行にまつわるエトセトラ

2024年1月はじめてのインド旅行前後のおはなし。

ピンクパーティ

朝の瞑想を終え、アシュラムを後にし、ホテルに戻って朝食を食べる。
全員でこれまでのツアーを振り返り、シェアしながらゆっくり朝の時間を過ごした。

その後支度をして、プネー空港に向かおうとロビーに集合した際に、それは起こった。

「しょこちゃん、ピンクパーティ来ないの?」

ツアー主催者であり、内観コミュニティの主宰者である女性が、インドから帰った翌週、高級ホテルでパーティを企画していた。
前日にインスタグラムで参加者募集の投稿をしているのを見かけ、インド瞑想ツアーの最中にもすぐに次の企画に向けて動いているなんて、すごいなあと眺めていた。

それだけで、自分が参加する、申し込む、という気はまったく無かった。

参加しないと考えた理由はいくつかあった。

そのパーティは、女子とピンクをテーマにしており、シャンデリアがキラキラした空間やピンクのドレスコード、その時はそこまで惹かれなかった。
インド旅行の後すぐのようだから、まだゆっくりしていたい、旅行記も書くのだし。
この旅行前後でお金を相当使っている。欲を認めると言っても、ピンと来てないものにお金を使う必要はない。
何よりパッと目に入った日付が、何曜日かわからないけど平日だということだけはわかった。平日は仕事だ。

だからチラリと見て、自分には関係ないものとして流した。
そのことに何も感じなかった。

それを翌日、ホテルのロビーで直接声をかけてもらった。
嬉しい半分、断らなければならない、と気まずさが走った。

念のため日程だけ、ダメモトの確認で聞いてみる。
もし土日で予定があいてたら、声をかけてもらったのだし、参加してみても良いかもしれないと思ったから。

やはり、帰国から約一週間後、平日火曜日の開催だった。
仕事なので断らなければならない。

決めるとき、選択するときは、はっきり決断するのが良いと思っている。
わたしは仕事をするという選択を取る。
いずれ現在の仕事を辞することを考えているとはいえ、それとめちゃくちゃすることとは別だ。
会社に籍を置いて仕事することを現在選択している以上、果たすべきことがある。
休み放題とはいかない。

今回は仕事なので、行きません。

行“けない”でも参加“出来ない”でもない、行“かない”、参加“しない”とはっきり断った。
わたしの選択、意思だからだ。

後から聞いたが、このとき私の顔は、緊張感に満ち、ほとんど怒りに近い表情だったらしい。
はっきり断らなければならない、と強く思っていた。

都合がつかないから行かない、普通のことだ。
気まずいとしたって、残念な顔や申し訳ない顔ならまだしも、怒りを表すのは何故なのか。
反発、抵抗、その裏にある緊張と恐れ。
意識は追いついていなくても、身体と本心は知っていたのだ、この後の展開を。

主宰者の女性は意外な、不思議そうな顔をした。

「ゾルバの物質的な豊かさ、強欲を認めるって、望んだよね?
それにピッタリの、高級ホテルで女の強欲が詰まったパーティーがあるのに、参加しないの?
本当に仕事は調整出来ないの?」

私の心は動かなかった。
強欲を認めるといっても、そこまで強く欲していないものに、日常生活の場を荒らしてまで参加する?
無い。

「参加する、しない、が重要なわけじゃない。
仕事があるから行かない、それでも良い、行かなきゃいけない、なんてことはない。
でも、行きたいのか、行きたくないのか、それすら感じもしないでチャンスを断ってるの、わかる?」

わからなかった。
仕事を休んでまで、荒らしてまで、強行しようというほど、強く惹かれてはない、そう感じていることがハッキリした意思で結論ではないのか。

「ねえ、もし仕事も何も予定が無かったら?
そしたらどうする?」

この問いでやっと、私の中の何かが揺らいだ。
仕事も何も予定がまったく無かったら?完全に空いている一日なら?
それはもちろん、参加する。
お金がかかると言ったって問題なく払える金額だし、そもそもその金額で超高級ホテルの空間を味わえるなんてお得だし、いつもなら着ないピンクのドレスワンピースでばっちりヘアメイクして行くなんて非日常も楽しそう。
一緒にインドツアーに来ている仲間も参加するし、他にもコミュニティの友達も来ていそうだし、新しく出会う人と話すのも楽しい。
人が集まる場のエネルギー、感覚を味わうことは貴重なことだってわかっているし。

仕事も何も予定が無かったら、そりゃ当然参加するに決まってます。

またもやキッパリ、今度はそう答えていた。

「だよね!ほら、ほんとは行きたいでしょ?
わかる?それを感じもしないで、無理!って始めから閉じて断っていたの、わかる?」

一瞬、何を言われたのか、わからなかった。

「その、本当は行きたいという気持ちを感じたうえで、本当に行けないのか考えてみて。
仕事が休めない、仕事だから行かない、それでも良いんだよ。
それなら、本当は行きたいのに悔しい、ってちゃんと感じてみて」

私の中は激しく混乱していた。

私ははっきり、そこまで惹かれないと感じていたし、行かないと自分の意思で決めていた。
でも、本当は行きたい?行きたいの?
数分前までのキッパリ断っていた自分と、今何も予定が無かったら当然行くと答えた自分。

確かに何も予定がなかったら、当然参加する。それを選ぶ。
それって参加したいってことなの?
その予定という条件、それが外れたら、参加を選ぶのだから。

予定という条件、つまり、仕事。

ゾワッと何かが這い上がって来た。
何か、何か開いてはいけないものを開いてしまいそうな。